さて、プラモデル用の自作のスジ彫り工具の比較である。
先日バイアランの製作で、デザインナイフの反対側を薄く削った自作の工具でスジ彫りを行なった結果、かなりできが悪かったことを書いた。そこで、きれいにできなかった検証も含め、改めて手持ちの工具でスジ彫りを行ない、その比較をしてみた。
私が今用意できるスジ彫り工具は以下の5種で、左から二つめの「デザインナイフの反対側①」というのがバイアランで使ったものである。中央の「デザインナイフの反対側②」は今回新たに作ったものであるが、砥石での削りが足りず刃先はt=0.3mmと厚い。右から二つめの「先の折れたデザインナイフ」は刃の先端が0.5mmほどかわずかに折れてしまったものである。
そしてこれらを使って実際にスジ彫りを行なったものが下の写真で、並び順は上と同じである。各工具とも気持ちでは同じ力で5回なぞっている。なお、Pカッターのみ比較のために1回と5回の2通りで実施した。
結果は見ての通りだが、「針」と現行の「反対側①」が幅は違えど同じように溝の脇にバリがでており、仕上がりが圧倒的に汚い。プラスチックを削るというよりは、肉を脇に押し退けながら溝を掘っているようである。「反対側②」と「先折れ」は見た目はほぼ同じでバリはほとんどなく、左二つに比べるとかなりマシである。そして最後のPカッターについてはさすが本来の使い方をしているため、一番きれいに彫ることができている。ただしPカッターの問題は、刃厚があるため(t=0.5mm)、力の入れ加減やなぞる回数によってかなり溝幅が変わってしまうとところと、彫り始めが刃先形状の関係で三角になってしまうことである。
ところで「反対側①」と「反対側②」が、デザインナイフを同じ使い方をしているにもかかわらずかなり仕上がりが異なる。このため、できの悪い「反対側①」の調査として、刃をよく調べてみた。
すると、下の写真ではやや見づらいが、刃先が平行ではなくナイフのようなΛ型になっていることがわかった。どうやらずっと使っていて切れ味が悪くなっていたことに加え、この刃先形状のせいで肉を掻き取るよりもむしろ脇に押し退けるような状態になっていたと推定される。このため、砥石で薄く削る際は、刃先は極力平行なП型になるようにしたほうがよさそうである。また、刃先を時々軽く研いで切れ味を維持しておくことも必要であろう。
一方のバリができなかった「反対側②」の刃先は確認はしていないのだが、こちらの刃先は比較的平行なП型に仕上がり、新しい分切れ味もよかったものと考えられる。
続いて、それぞれのスジ彫りにスミ入れを行なったものが以下である。白化した部分にスミが流れ込むことにより、見た目は彫っただけの状態よりは多少マシになっている。この写真はかなりアップで撮っているため差がよくわかるが、もしかすると、この程度であれば引いて見ると実は大差ないのかもしれない。とはいえ、やはりPカッターを1回だけ引いたものが圧倒的にきれいであることは間違いない。
ということで、今回使ったものの中から仕上がりのきれいさだけで選ぶとすると当然Pカッターになるのだが、一定の幅で彫れるようにするためには0.5mmもある刃厚を砥石で0.2mm程度まで薄くする必要がある。が、デザインナイフの反対側を研いでみた感覚からすると、これはかなり大変な作業になると予想される。薄刃Pカッターはいつか試してみたいと思うのだが…。
まぁ次回作まではもう少し時間があるので、その間にどれでいくか決めようと思う。
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